キャッチ三浦の

アメリカン・シーン

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三浦  勝夫
(ワールド・ボクシング米国通信員)
M.A.バレラと筆者

 見逃せない週末のラスベガス決戦

 今週土曜日、ラスベガスのオーリンズ・ホテルで行われる世界タイトルマッチが楽しみだ。メインはリカルド・マヨルガ(ニカラグア)とバーノン・フォレスト(米)のリマッチ。1月の初戦では不利と思われたマヨルガが2002年のMVP男フォレストを序盤(3回)でストップしてWBA&WBC統一ウェルター級王者に君臨。今年最大の番狂わせ候補となり、シンデレラ・ストーリーのスタートを切った。

 予想は?と聞かれると、正直答えに窮してしまう。初戦で目の当たりにしたマヨルガのパワー&ケンカボクシングが今回も爆発しそうな気もするし、フォレストが本領を発揮してリベンジを果たす結末も頭に浮かぶのだ。同時にこの一戦に限ったことではないが、両者の闘志が空回りして、序盤でつまらない負傷判定(ドロー)に終わるという最悪なシナリオも予測可能。ただ、第1戦でも証明された「リングでは何が起こるかわからない」というスリル感とハプニング性は、今回の再戦に関しても十分期待していいだろう。

 対決を前に“相変わらず”なのは2冠王マヨルガの方だ。「私はスーパー・チャンピオンでスーパー・ロコ(クレージー)だ」と叫ぶニカラグア人はスーパー・チャンプの方は今後証明していかなければならないが、後者に関してはもう、疑いをはさむ余地がない。フォレストから奪ったWBC王座、スライマン会長をして「はたして喫煙者をチャンピオンと認めていいものか…」と悩ませたヘビースモーカーぶり。記者会見ででビールを飲んだりするパフォーマンスも“健在”。ニカラグアに帰国中には違法の路上カーレースに関係するなど、文字通り“暴走行為”が報じられたものだ。

 ラスベガス入りしたマヨルガはそれでも飽き足らず?「自分の試合に10万ドル(約1,200 万円)賭けることにした。これは私がフォレストを倒さないと勝てないギャンブル。たとえ判定勝ちしてもパーになるんだよ」と公言。マスコミには「そんなのウソに決まっている」と冷たく扱われているが、ゴシップメーカーぶりを見せつけている。

 そんな王者に対して無冠となったフォレストは、記者発表会に欠席。試合まで1週間を切った時点で新聞やインターネットを通じて彼の近況を調べようとしても、なかなかネタが見つからない。深い山奥で一心不乱にトレーニングに集中しているのか? 仮にそうだとしても、ニュースソースに登場しないのが気にかかる。まるで報道規制を敷いている印象すらしてしまう。だから彼が試合前に催される会見でどんな発言をするか、大いに注目している。もちろん、彼の言葉によって調整具合や試合展開が読めるというものではないが、「モズリーにアマ、プロ通じて3連勝した男」だけで終わるかどうかの瀬戸際だけに、その心境を覗いてみたいのだ。

 ちなみに筆者と同じ町に住み、この試合の勝者との対戦も取りざたされているWBOウェルター級王者アントニオ・マルガリートに予想を聞いてみたところ「う〜ん、若干フォレストが有利かな」という返事。マヨルガに対して“挑戦状”を出しているマルガリートにすれば、意味深なコメントだが、それだけ予想が難しいということの現れなのかもしれない。ただ、マヨルガのハングリー精神は相当なものらしい。「私は今回も勝たねばならない義務がある。そうしなければ、故郷の町に電気を引くことができなくなる」と言っているほどだから。

 さて、同じリングで組まれている王者デマーカス・コーリー対元IBF王者ザブ・ジュダーによるWBO世界J・ウェルター級戦も予想が難しいカードだ。順当なら大舞台の経験でまさるジュダーの王座返り咲きを支持したいところだが、ジュダーはヅーとの3冠統一戦に敗れた後、1試合しか行っておらず、その間にヅー戦のパフォーマンスによるサスペンド期間があったり、裁判沙汰に見舞われたりとマイナス要素も多い。逆にコーリーは飛び抜けた出来ではなかったものの、堅実に防衛をこなしている。そのあたりの状況が勝負を左右するポイントになるかもしれない。サウスポー同士、しかもいずれもスピードを持ち味とするタイプだけに、間違いなくテクニカルな展開になるだろうが、一瞬のスキをついたパンチがドラマチックな結末も予感させる。自信タップリの言葉が飛び出す成長著しいコーリーと汚名挽回のチャンスをつかんだ元スーバースター候補ジュダーの意地が激突する。

★ミニ・ニュース

*横浜で星野敬太郎の挑戦を退けたWBC世界ミニマム級王者ホセ・アントニオ・アギーレは現在、メキシコでバカンスを楽しんでいるが、次回の防衛戦も日本のリングで行われるかもしれないと語っている。対戦を義務づけられていた1位マケバ(南ア)が自国で敗れ、イサック・ブストス(メキシコ)に取って代わった。いきなり同胞対決になる動きはなく、日本でまた稼ぎたい思惑があるようだ。

*ロードワーク中に暴漢に撃たれたり、その後の負傷でリングから遠ざかっている“セニョールKO”WBA世界S・フライ級王者アレクサンデル・ムニョス(ベネズエラ)が本格的にジムワークを開始している。といってもまだ具体的な試合スケジュールはなく、逆にムニョス本人も含めた陣営から「噂でもいいから、名前が挙がっている選手はいないか?」とたずねられる始末。すでに40ラウ
ンドほどスパーもこなしているそうだが、一時話が持ち上がったマルティン・カスティーリョ(メキシコ)との交渉も滞り、相手捜しに難航している。彼も日本に再登場か?

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