キャッチ三浦の

アメリカン・シーン

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三浦  勝夫
(ワールド・ボクシング米国通信員)
M.A.バレラと筆者

バレラ「フリー宣言」の背景と今後を読む


 そもそもボクサーとマネジャー、プロモーターとの利害関係を恒常的に保つことは無理なのか? そんな思いにさせられたのが、先頃のマルコ・アントニオ・バレラのフリー宣言である。フェザー級最強バレラが長年、二人三脚でキャリアを歩んできたリカルド・マルドナド・マネジャーとジョン・ジャクソン・プロモーター(フォーラム・ボクシング)との契約解除を要求するアクションを起こしている。
 十代なかばでプロデビューしたバレラを発掘し、一気にスターダムへ押し上げたマルドナド氏はメキシコのみならず、ラテンアメリカ諸国の有望ボクサーを多数配下に置く業界の重鎮の一人。とくにWBOに対して絶大な力を持ち、同マネジャーのバックアップの下バレラはWBO・J・フェザー級王者に君臨し、一世を風靡した。ナジーム・ハメド戦以後ビッグベアでキャンプを張り、調整がより
完璧になったのも同氏のサポートがあるからであろう。またアメリカに進出したバレラに無冠時代から活躍の場を与え、ファンを開拓したフォーラムの尽力も無視できない。
 だが、4月のケビン・ケリー戦後、メキシコの関係者から「バレラ陣営に何かが起きる」という話が流れていた。そして「バレラ−モラレス第3戦決定は誤報」というニュースが流れた直後、爆弾発言がバレラから発せられたのだ。そういえば、5月9日、サンディエゴで行われた試合で、バレラはメインに出場したWBO・J・バンタム級王者フェルナンド・モンティエルの応援にかけつけたのだが、どんな時でも彼をエスコートしていた無二の親友、マルドナド氏の次男オスカーの姿はその時なかった。法廷訴訟も辞さないバレラは「マネジャーやプロモーターがビッグファイトを私に何の相談もせずにアレンジしてしまう。私自身の自己管理能力を傷つけていることと同じだ」という内容の声明をプレス向けにリリースしている。
 スターボクサーが大物プロモーターに“三下り半”を渡したケースとしてオスカー・デラホーヤがボブ・アラム・プロモーターを訴えて、一時期袂を分かち合ったことがある。デラホーヤとアラムは約1年後に復縁して現在に至っているのだが、果たしてバレラの場合はどんなストーリーが待っているだろうか。
 正直、両者が関係を修復することは困難に思える。マルドナド氏といえば、ブラジルのKOマシーン、アセリーノ・フレイタスも擁していたのだが、「アディオス!」の一言もなく、一方的に他のマネジャーに去られた一件がある。同氏とライバル関係にあるメキシコのマネジャーも「ヤリ手には違いないが、金銭関係にはすごくシビアだ」と同氏を評する。矢面に立たされたマルドナド氏は「アッケにとられている。ジョン(ジャクソン氏)と私は試合をネゴするという我々の仕事を遂行している。なぜ反旗をひるがえすのか、さっぱり分からない」とあくまでポーカーフェスを貫く。フレイタスを失ったものの、法廷訴訟では勝利を収めたというから、バレラも安心できないかもしれない。
 さて、バレラがフリーの立場を確保できるとして、業界では早くもちょっとした“争奪戦”が繰り広げられそうな気配だ。まず、最近勢力を拡大しつつあるルゥ・ディベラ・プロモーターが密かに彼をねらっていると噂される。ボブ・アラム(トップランク)も「法廷闘争になったら、サポートを惜しまない」とリップサービスを忘れない。また、9ヵ月間のサスペンドが解けた前S・ウェルター級王者フェルナンド・バルガスも「チーム・バルガスは全面的にバレラを支援する」とラブコールを送る。バルガスの後ろ楯はメインエベンツ社。バレラも29歳。キャリアも終盤にさしかかり、“売り手市場”の強みを発揮して今後も名声を維持して行くか?

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