キャッチ三浦の

アメリカン・シーン

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三浦  勝夫
(ワールド・ボクシング米国通信員)
M.A.バレラと筆者

 

ゴメスは第2のロイ・ジョーンズになれるか?
 ヘビー級戦線に新たなドラマと衝撃を生む予感

 

GOMEZ,JC.JPG - 15,425BYTES しばらくリングから遠ざかっていた前WBC世界クルーザー級王者フアン・カルロス・ゴメス(キューバ)が本格的にヘビー級進出をはかることになった。プロキャリア36勝31KO無敗を誇るゴメスは、アマのリーダー、キューバからヨーロッパへ亡命。ドイツで34試合戦い、その間に10度防衛を果たした無敵チャンプだった。
 王座返上後ゴメスがラスベガスで行ったアル・コール戦を観戦した。彼はマイケル・グラント、ジャミール・マクライン、カーク・ジョンソンといったヘビー級大型ランカーたちが倒せなかった鋼鉄のアゴの持ち主コールを堂々ストップし、存在感を知らしめたものだ。コールも元クルーザー級王者(IBF)だが、ゴメスのパワーの前に彼の経験と技巧は歯が立たなかった。
 だが、2戦ほど勝って、すぐさまタイトル戦が実現するかというと、ヘビー級はそれほど甘くない。ゴメスも“新参者”の苦渋を味わうことになる。母国キューバに近いマイアミに居を移したゴメスだったが、ここ1年は上位陣に敬遠されるように活躍の場を失う。年齢的にも“旬”の時期を失う心配が囁かれた。だが、結果的にこのブランクは無駄ではなかったようだ。マイアミからのニュースでゴメスは、アリを指導した殿堂入りトレーナー、アンジェロ・ダンディを師に仰ぎ、半年前からトレーニングに明け暮れていたそうだ。そしてつい最近、シュカー・レイ・レナード・プロモーションと契約し、今後のビッグマッチを見据えた体制を確立しつつある。
 とりあえず彼には最大手ケーブル局HBOが再度主催する新鋭ヘビー級シリーズ(ゴメスを若手と呼ぶには語弊があるが)で、サバイバルマッチが組まれる見込みだ。久々に大物を手がけるベDUNDEE.JPG - 4,581BYTESテランのダンディ氏(右写真)は、ゴメスには欠点らしい欠点が見当たらないと言い、「ファンは絶対、彼を気に入るに違いない。それが一番重要なことなんだ。私さえも彼のファンになってしまいそうだよ」と目を細める。また、彼とレナード・プロモーションとの仲立ちをしたマイアミの顔役、「チーム・フリーダム」のルイー・デクバス代表も期待を寄せる。「あと2、3戦こなせば、タイトル戦のチャンスが訪れるだろう。すでに彼はベルトを争えるレベルに到達している」
 軽いクラスからのヘビー級進出、制覇といえば、どうしてもロイ・ジョーンズの快挙をあげなければならない。ジョーンズが類いまれなスピードとスキルを駆使して頂点を極めたのに対し、ゴメスは硬派というか、あくまでパワーで勝負するタイプ。クルーザー級時代のパフォーマンスをプレイバックしてみても、KOにこだわる選手に見える。ただ、カリスマ・トレーナー、ダンディ氏が一番驚嘆したのは彼のスピードだというから、それにいっそう磨きをかければ、鬼に金棒ではないか。周囲の期待だけではなく、第2のジョーンズ誕生の可能性を感じてしまうのだ。 ゴメスの参戦はヘビー級戦線に新たなドラマと衝撃を生む予感がする。

ミニ・ニュース
●・WBA/WBO統一世界S・フェザー級王者アセリーノ・フレイタス(ブラジル)のプロモーター、アーティー・ペルージョ氏によると、宿敵の前王者ホエル・カサマヨール(キューバ)とのリマッチが11月か12月に実現するという。カサマヨール陣営は統轄団体の一つWBOに対して対戦を義務づけるよう、訴訟を起こしていた。
●・オスカル・ラリオスに初回KO負けの後、4月に再起した(2回KO勝ち)前WBC世界S・バンタム級王者ウィリー・ホリーン(米)が6月12日、シカゴのリングに再登場することになった。王者時代は試合枯れだったホリーンだが、ふっきれたのか俄然アクティブに。もちろんメインエベンターを張る。

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