キャッチ三浦の

アメリカン・シーン

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三浦  勝夫
(ワールド・ボクシング米国通信員)
M.A.バレラと筆者

 

父子コンビ是か非か
モズリー家の場合は?

 9月13日、ラスベガスで予定されるデラホーヤ−モズリーのリマッチに向けて記者発表会が催された。もちろん、デラホーヤはリベンジを誓い、モズリーも返り討ちを宣言しているのだが、ことのほか“目立っていた”のがゴールデンボーイをコーチするフロイド・メイウェザー・シニアである。
「大きな声では言えないが、彼(デラホーヤ)が過去に雇ったどうしようもないトレーナーたちとは私は違う」と大胆な?発言をしているのだ。“どうしようもない”と酷評されたのは、ロベルト・アルカサール(アマ時代から長年コンビ)、ヘスス・リベロ(メキシコの伝説トレーナー)、ジル・クランシー、エマヌエル・スチュワートの4人衆。このうち後者2人はボクシング殿堂入りも果たした著名トレーナーである。とくにスチュワートに対して手厳しく、「彼がオスカーに教えたことはジャンプしてパンチを打つことだけ。名誉の殿堂ではなく、インチキ殿堂入りした男」と毒舌を浴びせる。
 メイウェザー父といえば、自分の息子であるWBC世界ライト級王者フロイド・ジュニアにその指導能力を問われ、仲たがいし結局、解雇された人物。その3年前に比べると随分威勢がよくなったものだが、これは試合前の心理戦、先制パンチと解するのが妥当だろう。彼は今までデラホーヤにMOSLEY SR.&JR..JPG - 16,121BYTES手を施したコーチたちを名指しで批判しながら、実は暗にモズリーの実父でトレーナー兼マネジャーのジャックを皮肉っているようにも思える。
 モズリーとジャックの関係はメイウェザー親子とは正反対で、終始良好のように映る。モズリーは父に絶対の信頼を寄せていると伝えられる。それはバーノン・フォレストに連敗という屈辱を味わっても、変わらなかった。だが、同時に「シェーンは他の名トレーナーに従事すべし」という声が周囲から聞かれるのも事実なのだ。個人的な印象を述べると、モズリー父は好人物で、指導歴からももっとも息子に適したトレーナーかもしれないが、カムバック戦でもパッとしなかったモズリーには何らかの内部変化が必要に思えてくる。肉親独特の甘さも感じられる。そこには親子鷹の“限界”が見え隠れする。
 後日、敵の参謀役メイウェザー父は鋭いフォローパンチを浴びせた。「モズリーには本当にいいトレーナーが必要だよ。彼の父はトレーニングできる人間ではない。もし彼が息子を立派に指導できるのなら、なんで次々と新トレーナーの名前があがるんだ?」。これは自分自身の苦い経験から発した言葉とも取れるのだが、今回、大一番デラホーヤ再戦を前に、モズリーには売れっ子のバディ・マクガートや前述のスチュワートといった候補者がリストアップされているという噂が絶えない。
 洋の東西を問わず、リングの世界には親子コンビが多数存在する。しかし、ビッグマッチで結果が出なかったことはトリニダード親子や長嶋親子の例でも証明されている。果たしてモズリー陣営に変革はあるのか?

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