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ゲストコラム : トレーナーの目 vo.7

石井 敏治 (新日本木村ジム・トレーナー)

 賞金トーナメント「B−tight」

 日本のボクシング界において全く新しい企画として、賞金トーナメント「B−tight」が4月14日、後楽園ホールでスタートした。このトーナメントの詳細についてはワールド・ボクシングの3月号に記述されているので、ここでは概略を説明すると、第一回目の対象となるクラスはフェザー、ライト、ウエルターの三階級で、出場資格はA級選手。トーナメントは全て4回戦で、第一戦4月14日、準決勝6月23日、決勝8月21日にわたって行われる。ルールは原則として4回戦を適応。但し、1ラウンド中に3度のダウンでKOとなる。準決勝までは引き分けの場合は優勢点で勝ち残りを決め、決勝戦のみ1ラウンドの延長で勝敗を決める。話題の賞金並びにファイトマネーは、優勝者は200万円+24金(1kg)トロフィー、準優勝者は50万円+24金(500 g)トロフィー。全階級を通じて一人選ばれる最優秀選手には220万円相当の国産車が贈られる。
 ファイトマネーは、勝者が30万円、敗者が10万円、引き分けの場合は20万円が、それぞれ現金で支払われる。KO賞は、初回で20万円、2回で15万円、3回で10万円、4回で5万円が支給される。この新しい企画は、プロボクシングの発展を目指して、ワタナベジムのチーフ・マネージャーの瀬端幸男氏がプロデュースし、渡邊 均会長がバックアップして実現した誠に貴重な企画だと思う。この企画の着目すべき点は、先ずこのシステムは、成功報酬方式であること、豪華な褒美が数多く並んでいること。全てが4回戦であること。成功報酬で、KO賞が確実に得られるので、ボクサーは果敢な攻撃で、少ないラウンドを全力攻撃して結果として試合のクォリティアップになる。毎年行われる全日本新人王決勝戦の観客動員数はいつも多いものである。これと今回の賞金トーナメントとは、全く同じ類型に属するものであると思う。この辺りのプロデュースの妙に一向感服するのみである。さて、私の指導する選手も此のトーナメントに出場しているので、初戦にセコンドとして参加した。先ず会場の入りは相当の観客を吸収していた。出場する選手諸君の表情は、各人相当に緊張していて、控室の雰囲気もいつにも増して厳しいものを感じた。私達の出場順位が最後だったので、何戦かの試合を垣間見る事が出来たが、総じて、出場選手は、リラックスさに欠け、夫れ夫れ平常の力が発揮出来ないように見受けた。勿論我が方の選手も同じであった。此の辺りを分析して見れば、昔の若者も現代の若者も全く変わって無い。原因は、KO賞であり、高額な賞金を意識して自らの闘争心を高揚させ、集中力を高める結果、その意識過剰から来る硬さであろう。これからのプロボクサーは、金とか褒美に対して貪欲であって欲しい。蓄えた技術と体力とファイティングスピリットを限られた正味12分間に傾注する為に心理的、肉体的な硬さを乗り越える術を身につけてほしい。次は各クラス共A、Bブロック各準決勝戦であり、初戦の硬さは取れると思うが、出場者は、与えられたチャンスを生かすためにも平常の力をボクシングファンに披露して頂きたい。今回のトーナメントの成功により試合報酬も、最低限度の保証と成功報酬で決めることによって試合内容を充実する事が恒常化するのが望ましい。
石井敏治


現在も新日本木村ジム・トレーナーとして指導に当たっている石井氏

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