ショーセイの新米ジム会長奮戦記

新田 渉世　
(元東洋太平洋バンタム級王者)

　講演

　懐かしい高校時代の友人からEメールが来た。彼は我々の郷里である神奈川県秦野市の中学校で教員をしている。しばらく連絡もとらずに疎遠になっていたが、私がジムをオープンして“新米会長”として奮闘していることを別の友人から聞きつけ、「中学校で生徒達に講演をしてくれないか」と依頼を申し入れてきた。
　講演は、“何かを表現すること”や“聞き手を楽しませること”等の勉強にもなり、自分にとっても有益なものと考えている為、今回この依頼を快く引き受けることにした。
テーマは先方からの指定で、「社会人講演会―人生の先輩に学ぶ」というものだった。90分の時間を自由に使って構わないということだったので、私は現役のプロ選手を連れて行き、生徒達にスパーリングを見せてあげる案を思いついた。友人の教員に打診したところ「是非お願いしたい」ということだったので、ウェルター級の西 禄朋、Sライト級の竹内俊介を同行させた。まだ駆け出しの彼らにとっても、人前で“プロボクサーとして”あいさつをし、自分を売ってゆく良い経験になるだろうという思いがあったからだ。
前半の60分を「講演」に当て、後半の30分は「ミット打ち体験とスパーリング見学」という構成を組んだ。初めは中学生達も少し緊張ぎみで、彼らの気持ちを引く為に無理して用意してきた“芸能ネタ”の受けも今ひとつだった。しかし私が小学6年生でプロボクサーを志したことや、夢を実現する為にどんな風に中学時代を過ごしたかといった話になると、彼らのアンテナが少しずつ反応してくるのが分かった。
後半の「ミット打ち体験とスパーリング見学」では、まずは数名の希望者を前へ呼び出してグローブをはめさせると、生徒たちの目が見る見る輝いていくのがはっきりと分かった。パンチの打ち方を教え、実際にミットを打たせると、男女問わずに会場は大いに盛り上がってきた。そして西と竹内が彼らの目の前で実際にスパーリングを始めると、生徒たちは息を殺して食い入るようにそれを見つめていた。彼らの心には確実に何かが刻まれたに違いない。「よし！」確かな手ごたえを感じて無事に今回の講演会を終えることが出来た。
帰り際に何人もの生徒が駆け寄ってきて、西や竹内にサインをお願いしていた。まだサインを書いたことがない2人は、戸惑いつつも丁寧に自分の名前を書いて生徒達に手渡していた。“新米会長”も1枚だけ書かせていただいたが、主役はやっぱり若い現役ボクサーの2人だった。やはり若い現役選手にはかなわない。
後日、その中学校から生徒達が書いてくれた感想文が送られて来た。「今回の講演をこれからの自分の人生に生かしてゆきたい」「初めて間近でスパーリングを見て、プロはやっぱり凄いと思った」等々、どれも真剣な思いで書いてくれたのが伝わってきた。無理して芸能ネタなど用意しなくても、教員の友人が言った通り「本物であることだけで十分」だったのかもしれない。彼らの心に何かしらの影響を与えることが出来たとしたなら、新米会長の奮闘も少しは“意味あるもの”になるのかな・・・。

　新田ジム　最新情報

・ 5月31日（日）元東洋太平洋フェザー級王者の今岡武雄氏（現イマオカボクシングジム会長）が、新田ジムで講演会をおこない、選手や練習生達にご自身の体験を踏まえたイメージトレーニングなどのお話を聞かせて下さいました。
・　6月2日（水）東京後楽園ホールでおこなわれた「東日本新人王予選」の結果です。
　　Sライト級4回戦　●竹内俊介（新田） 判定1-2　金 晢徹（ドリーム）○
　　竹内の戦績は3勝（3KO）1敗となりました。
・　6月15日（火）東京後楽園ホールにて、瀧澤佳樹がプロテストを受験します。
・ 6月19日（土）新田ジムの清水開（15）が、神奈川県インターハイ予選に出場します。
・　7月5日（月）東京後楽園ホールにて、3名のプロ選手の試合が決定しました。
　　　　ウェルター級　西　禄朋（新田）　vs　倉田和幸（ワタナベ）
　　　　契約62kg級　當山清隆（新田）　vs　池田陽介（ワタナベ）
　　　　フェザー級　　志賀　悠（新田）　vs　小平恵司（伴

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