ショーセイの新米ジム会長奮戦記

新田 渉世 
(元東洋太平洋バンタム級王者)


 赤門ボクサー2

 新田ジム練習生の現役東大生、酒井知基(バックナンバー36参照)を覚えているだろうか。昨年12月のプロテストに一度不合格となった酒井は、今春大手広告代理店D社への就職が決まっていた。彼は何とか就職前にプロライセンスを取得したいと考え、再度受験申請をしていた。ところが、その申請が何かの手違いで受理されていなかったことが発覚し、「日本で就職前に再挑戦が出来ないのなら、海外でプロライセンスを取得します。就職する前に、何としてもボクシングをやった証を残したいんです」と、時間とお金を工面して、彼自身が持つ米国と韓国の2つのルートで準備を進めていた。
 その後、ジムホームページには「酒井さんは現在、どうしているのでしょうか?」といった質問が何通か書き込まれた。思いのほか彼への関心が高かったことに、本人も含めていささか驚かされた。
 実は、彼は今年2月に単身渡米してプロライセンスの申請も終え、アマチュアの試合を1戦おこなう予定になっていた。しかし、彼の人生もなかなか波乱に富んでいる。なんと、受理されていなかったはずの申請に対し、受験票が郵送されてきたのだ。私は早速酒井にEメールを送り、彼の意思を確認した。「3月9日の日本でのプロテストを受験するか?」その時期は会社の新入社員研修の真っ只中だ。酒井は「すぐ帰国します。何とか調整しますのでよろしくお願いします」というEメールを返信してきた。米国でのアマチュア戦をキャンセルしてこちらへ戻り、「悔いの無いトレーニングを積んでテストに挑みたい」というのが彼の意思だった。
 酒井の意気込みに心を打たれた私は、彼が帰国するやいなや、密着して彼のトレーニングに付き合った。時には厳しいことも言い、「絶対合格するぞ!」とはっぱをかけ続けた。どちらかというと虚弱体質で、前回は厳しいトレーニングに耐え切れなかった酒井だが、今回はサプリメントなどを上手に利用してそれを乗り切った。新入社員研修のスケジュールの合間を縫って、やるだけのことはやった。
 そしていよいよ3月9日の受験日当日を迎えた。私もテスト開場に同行し、最後まで彼の面倒をみた。2度目の受験となる酒井は筆記試験を免除され、いきなり実技試験のスパーリングをおこなうことになった。「いいか、死ぬ気でやって来い。何が何でも合格するぞ!」私は酒井に最後のはっぱをかけ、リングへ彼を送り出した。「強い左ジャブとワンツーの連打。下がらずに積極的に責め続けること」前回出来なかった合格の為の条件を、今回の酒井はたくましく実行した。
「すみませんでした・・・」テストを終えてリングを降りてきた彼は、うな垂れてそうつぶやいたが、私はほぼ間違いなく合格であることを確信していた。その日の夜、酒井知基のプロテスト合格を確認した私は、すぐに彼に電話をかけ「おめでとう!」と告げた。 
 「あの時はホント泣いちゃいましたよ」後に彼は述懐した。晴れてプロライセンスを取得した彼は、翌4月に正式にD社へ入社し、新米社員として奮戦中だ。彼に寄せられたジムホームページへの書き込みに対して、「現在は以前のように練習できておらず、試合をするような状態にはありません。だからといってボクシングをやめたわけではなく、時期をみて復帰いたしますので、それまでお待ちください。これからも応援よろしくお願いします。」酒井はそう返信した。


 新田ジム 最新情報

・5月25日(火)東京後楽園ホールにておこなわれた「エキサイトボクシング」の試合結果です。
   
契約68kg級 ○西禄朋(新田)1RKO 末原功太郎(宮田)●

 西はこれで3勝(2KO)。次回は7月5日(月)にワタナベジムの倉田選手との試合が決まっています。

・同日おこなわれたプロテストで、山口陽司、當山清隆の2名が合格。これで新田ジムプロ選手は合計で13名となりました。

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新田渉世(にった・しょうせい) 
87年、横浜国大2年の時にプロデビュー。96年10月にOPBFバンタム級王座を獲得し、「国立大卒初の王者」としても話題となった。
34戦23勝(17KO)9敗2分

新田ボクシングジム   
神奈川県川崎市多摩区登戸2832 小田急線向ケ丘遊園駅徒歩5分
TEL 044-932-4639
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