ショーセイの新米ジム会長奮戦記

新田 渉世 
(元東洋太平洋バンタム級王者)


 セコンドデビュー

 いよいよ明日は、石井フランシス、西禄朋、竹内俊介のプロデビュー戦。それは同時に新田ジムとしてのプロデビュー戦でもあった。新米会長の私と新米トレーナーの孫は、夜10時半のジム閉館後、初舞台に向けて入念な打合せをおこなった。ジムにはセコンド経験のある人間がいない為、我々は事前にビデオなどでセコンドワークを勉強し、何が必要なのか、誰が何をするのかを打ち合わせた。
 初舞台でいきなり3選手の試合である。それぞれの準備を、迅速におこなわなくてはならない。まずはバンデージの巻き方を確認した。現役時代は巻いてもらう側だったが、巻く側になると勝手が違うものだ。ジムスタッフの岩ちゃん(バックナンバー19の“Iちゃん”)にも協力してもらい、我々は薄暗いジムの中で実際にバンデージを巻く練習を何度も繰り返しおこなった。日頃“減らず口”ばかりの岩ちゃんもこの時ばかりは少々緊張気味で口数が少なく、それが妙におかしかった。ふたりの“新米”は、下手くそながら何となくバンデージをそれっぽく巻けるようになった。
 次は役割分担だ。孫トレーナーは、チーフセコンドとしてマウスピースの出し入れ、給水、血止め、といった“実務(?)”を中心に担当することにし、試合経験の多い私が、サブセコンドとして“インターバル中の指示”を中心に担当することにした。選手が座る椅子の上げ下ろしや、タオルしぼり等の“補助”を坂本トレーナー(バックナンバー27の“YS氏”)に担当してもらうことにした。ジムのリングを使い、何度もシミュレーショントレーニングをおこなった。最も心配なのは、選手がカットした際の“血止め”だったが、孫トレーナーが事前に金子ジムを訪ねて“血止め”の技術を勉強してきたので、彼に任せることにした。
氷のう、綿棒、ガーゼ、エンスウェル、給水ボトル、テーピング・・・、必要なものは準備出来た。バンデージの巻き方も練習したし、役割分担を決めてシミュレーショントレーニングもした。“新米軍団”の初陣の仕度は整い、後は明日の本番を待つだけだ。生鮮市場で働く孫トレーナーは、普段は遅くても夜10時には眠りについている。明日も午前2時半には起きなくてはならない。眠い目をこすりながらも気合十分のこの男が、とても頼もしく思えた。
 ジムオープンから8ヶ月。ほとんど全力疾走でここまでやって来た。今回はジムとしての“プロデビュー”というひとつの節目ではあったが、感慨にふけるひまなど全く無かった。デビュー戦を明日に控えた3選手の、それぞれの“人生の一部”を背負ったといっては僭越かもしれないが、その責任と心配とが入り混じり、胃がキリキリと痛んだ。“我が子を戦場に送り出す父親の心境”という表現が適切だったかもしれない。この夜は、既に他界した父のことを思い出しながら眠りについた。

 新田ジム 最新情報

・ 4/17(土)、4/18(日)におこなわれた平成16年度神奈川県一般ボクシングオープン戦の結果は、伊藤祐悦が「判定勝ち」、他の3名は残念ながら「判定負け」でした。
・ 4/26(月)に後楽園ホールで行われる「トクホンVダッシュ第57弾」にて、下記2名がデビュー戦をおこないます。
契約65.6kg 笈川慎也(新田) 4R 高橋マサル(花形)
フェザー級  岡田祐也(新田) 4R 高久祐樹(ひたちなか)
・ 5/25(火)東京後楽園ホールにて、西禄朋(2勝1KO)が宮田ジムの末原功太郎(3勝3KO2敗)と4回戦・契約68kgにて対戦することが決定しました。
・ 6/2(水)同会場にて、竹内俊介(3勝3KO)がドリームジムの金 晢徹(3勝3KO)と東日本新人王予選4回戦・Sライト級にて対戦

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新田渉世(にった・しょうせい) 
87年、横浜国大2年の時にプロデビュー。96年10月にOPBFバンタム級王座を獲得し、「国立大卒初の王者」としても話題となった。
34戦23勝(17KO)9敗2分

新田ボクシングジム   
神奈川県川崎市多摩区登戸2832 小田急線向ケ丘遊園駅徒歩5分
TEL 044-932-4639
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