ショーセイの新米ジム会長奮戦記

新田 渉世　
(元東洋太平洋バンタム級王者)

　チケット販売２

　話が長くなったが、今回は初めての共同プロモートに伴う失敗や困難などをあれこれ綴らせていただいている。“経営者”という立場になると、どうしても“カネ勘定”の話が多くなり、自分でもうんざりしてきているところだが、食っていく為、皆を豊かにしてゆく為には避けて通れない問題なのでもう少しお付き合いいただきたい。
　いくつかのジムが出資し合って興行をおこなう共同プロモートを、業界では“乗り興行”と呼ぶ。前にも述べたが、通常この“乗り興行”では自分のジムから出場する選手の総ラウンド数×2万円の資金を出資し合うことになっている。新田ジム初の“乗り興行”では、石井フランシス、西禄朋、竹内俊介の3名が4回戦デビューすることになり、合計24万円（4R×2万円×3人分）を出資しなくてはならなかった。加えて選手のファイトマネーも捻出しなくてはならない。プロモーター、つまりジムとしてはチケットをさばいて相応の現金を作り出さなくては赤字になってしまう。
　さて大変だ！まだ後援会も何もない新米ジムだ。心から応援してくれている人々はいる。しかし必ずしも“後援”と“応援”はイコールではない。応援してくれている人が、“お金”
　を出してチケットを買ってくれるとは限らない。現役時代に私の試合を見に来てくれていた友人達も、「お前が試合するわけじゃないからなぁ・・・」と微妙な反応だった。昔の同級生達も若い独身時代と違い、仕事と家庭を持ち、自由に使える時間もお金も少なくなっていた。海外生活、サラリーマン生活と現役引退後は、応援してくれた人達と疎遠になっていたことも予想以上に響いていた。「ジムの勢いづけ」や「選手育成」の為に乗った話なので、利益までは期待はしていなかった。とはいえ、正直なところ赤字は避けたかった。
　幸い、西禄朋、竹内俊介の両名がよくチケットを売ってくれたので、ジム、選手双方にとって良かった。二人ともファイトマネーを「チケット支給」で希望した為、ジムとして現金を捻出する必要がなかった。更に本人達のファイトマネー分以上にチケットを販売してくれたので、販売力のないフランシスのファイトマネーも「現金支給」することが出来きた。興行の必要経費も賄うことが出来た。共同プロモーターとして、いくらかの利益を出すことも出来た。選手達には僅かながらボーナスを出すことも出来た。良かった、良かった。
　しかし逆に考えると、もし彼らに販売力がなければおそらくジムは赤字になっていただろう。地方出身選手や内向的な性格の選手など、販売力のない選手の方がむしろ多い。彼らの試合をプロモートするとジムは赤字になってしまう。とはいえ、他のジムから声がかかるのを待っていてはなかなか試合に参加出する機会を持てない。自分が選手の時には見えなかったことが、シビアに背中にのしかかってきた。
　さあ、選手の利益、ジム及びスタッフの利益を確保してゆかなければならない！　新米会長は強烈な右ストレートをもらいつつも、ぐっとこらえて反撃の機会を窺うのだった。

　新田ジム　最新情報

・4/13（火）に後楽園ホールでおこなわれた「第61回東日本新人王予選」にて、ライト級にエントリーする竹内俊介が、山田悠太選手（新日本タニカワ）を3RKOで破り2回戦へ駒を進めました。竹内の戦績はこれで3勝（3KO）。次は同じく3勝（3KO）の強豪、金 晢徹（ドリーム）と対戦します。

・4/10（土）横浜市の関内ホールにて、アマチュアボクシング「平成16年度・横浜市民体育大会ボクシング競技会」の抽選会がおこなわれ、新田ジムより清水開、黒田雅之、古橋大輔の3名の高校生が、4/29（木）の同大会に出場することが決定しました。

・4/17（土）、4/18（日）におこなわれる平成16年度神奈川県一般ボクシングオープン戦に、荒木敬一郎（25）、伊藤祐悦（31）、井上真（30）、慶伊孝亮（24）の4名が「一般の部」に出場致します。

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