ショーセイの新米ジム会長奮戦記

新田 渉世 
(元東洋太平洋バンタム級王者)


胃の痛い日々は続く……


  2003年7月10日に、西禄朋と竹内俊介のプロテストが行われることになった。ふたりは5月にJBスポーツ、6月に角海老宝石ジムのスパーリング大会に出場していた。西は1勝1敗、竹内は2勝(2KO)という戦績を残してプロテストに臨んだ。西は、交通事故のリハビリ目的で新田ジムに入会してから、僅か5ヶ月しか経っていない。竹内も他のジムの練習生として、少しだけボクシング経験があったに過ぎない。ただ、以前にも述べたことがあるが、決してプロ選手育成をあせっていたわけでもないし、受験は早ければいいというわけではないことも十分承知していた。それでも、何となくこのふたりは大丈夫な気がして受験申請してしまった。
 プロテストは、ルールや技術などの基本知識が問われる簡単な筆記テストと、技術やスタミナを試される実戦スパーリングによって行われる。
 ジムプロ選手第一号の石井フランシスがテスト受験した際も、それなりに不安はあったが、長年アマチュアで培ったものを出し切ってくれれば何とかなるだろう―という楽観的な部分もあった。しかし、西と竹内はふたりとも新田ジムで生まれ育ったようなものだ。"大丈夫な気がして・・・"とはいえ、フランシスの時とはまた違った親心のようなものが不安を増幅させ、胃の痛い思いをさせた。
 あまり勉強が得意でなかった(?)西も、筆記テストを何とか乗りきり、いよいよ実戦スパーリングテストになった。階級が重いふたりの順番はずっと後ろの方だった。順番待ちの間、注意すべき点を改めてふたりに言って聞かせた。―プロテストで問われるのはあくまでも「基本技術の習得であって、勝負の勝ち負けではない」「ジャブとワンツーがしっかり打てること」「パンチをしっかりよけられること」「審判員からの注文にすぐ対応出来ること」「手数を沢山出せること」云々。
  西はすぐにガードが下がって"勘"に頼るボクシングをしてしまう。おまけにボクシングを始めてまだ5ヶ月。竹内はフック系のハードパンチャーの為、ジャブとワンツーが苦手。しかもスパーリング大会で2連続KO勝ちをしているので、得意のフックを振り回す可能性が高い。やはり胃がシクシクと痛んだ。
 先に竹内の順番が回ってきた。初めは私の言った通りジャブとワンツー主体のボクシングを試みていたが、時間と共にフックとアッパーが多くなってきた。「竹内、ジャブ、ワンツーだ!」その声もむなしく竹内はフックとアッパーを打ち続けた・・・。次の瞬間、「ストォップ!」レフェリーの叫び声と同時に、相手がマットに仰向けに倒れた。そこでスパーリングは終了となった。「勝ち負けではない―」結果を聞くまで合否は分からない。
 続いて西の順番が回ってきた。ジャブとワンツー主体の綺麗なボクシングで良いスタートを切った。しかし―、「西、ガード!ガード!」やっぱりいつものクセが出てしまった。結局あまりパンチをもらわずに2Rをこなすことが出来たが、やはり"勘"に頼るボクシングになってしまった。後は天命を待つのみである。
 我々は、帰りのエレベータで審判員のU氏と乗り合わせた。「ふたりとも、今日はなかなか良かったじゃないか」―気休めか本心か分からなかったが、やはり期待は膨らんだ。脳天気の西はケタケタと笑いながら、よせばいいのにU氏に今日の自分の出来栄えを「あーだ、こーだ」と語っていた。
 翌日、後楽園ホールに合格者の名簿が張り出され、ふたりの合格が発表された。これで新田ジムに3名のプロ選手が誕生したことになる。喜びと共に、ますます胃の痛い日々が続きそうな予感がした―

 

新田ジム 最新情報

・ 2/24(火)に行われた西禄朋のプロ第2戦(対 砂川耕平=草加有沢)は、1RKO勝利でした。これで西の戦績は、2勝(1KO)となりました。
・ 3/7(日)に行われるJBスポーツスパーリング大会に、清水遊・関谷昌亮・山口陽司・溝口孝良の4名が出場することになりました。


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新田渉世(にった・しょうせい) 
87年、横浜国大2年の時にプロデビュー。96年10月にOPBFバンタム級王座を獲得し、「国立大卒初の王者」としても話題となった。
34戦23勝(17KO)9敗2分

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