ショーセイの新米ジム会長奮戦記

新田 渉世 
(元東洋太平洋バンタム級王者)


リングひとつ用意するにもひと苦労

"資金"と"ハコ"は確保した。今月から嫌でも多額の家賃を支払ってゆかなくてはならない。目の前にはガランとした24坪のスペースと、大家から譲ってもらった古い事務机がひとつあるだけ。電気もないガランとしたスペースでひとり工事用ライトを灯し、毎夜遅くまで仕事をこなしていた。
当初の計画では、最低でも70人の会員を確保する必要があった。一日でも早くオープンし、収入を上げてゆかなくてはならない。しかし「ここはボクシングジムです。」と宣言するためには、リング、サンドバッグ、グローブ等の用具類、それと更衣室、シャワー室などが必要だ。正月を挟んだ難しい時期ではあったが、全ての準備に約2ヶ月間の時間をあて、オープンの日程を翌年2月5日と定めて走り出すことにした。
まずはリング―。と言っても何をどうすればよいのか、何も分からない。既製品はえらく高額である。地方の知人のジムでは、材料をタイから取り寄せて親しい工務店に作成してもらった為、同サイズ既製品の5分の1以下の価格で仕上げている。もちろん見栄えは多少劣るが、使用上差し支えはない。「よし、これでいこう!」
早速、知っている近所のK工務店に事情を説明して協力を依頼した。タイの業者(日本人)も紹介してもらい、Eメールで交渉を始めた。ところが、当然ながらK工務店はリング作成の知識は皆無。一から勉強して取り組まなければならない。リング作りは一見簡単なようで結構難しい。形だけ仕上げても、激しいスパーリングによってポールが曲がってしまい、結局修繕費が高くついてしまったというSジムの例もある。設計から材料の輸入仕入れまで、時間的な余裕はなかった。「何か他に良い方法はないのか・・・」情報収集に奔走した。
そんなところへ思いもよらない話が舞い込んできた。かつてKジムの地方興行で使用されていたリングが、現在働き口が無く倉庫で失業中だというのだ。元プロボクサーのテント屋さんが作ったモノで、品質は確かだ。安く譲ってもらえればこれに超したことはない。但し、公式試合で使用していた為、サイズが大きく床の高さも約1メートルあり、とても24坪の店舗事務所用NITTA-COLUMN.JPG - 11,645BYTESスペースに収まる代物ではない。ひとまず改造と設置にいくら位かかるか見積ってもらうことにした。
これまでの経緯等いろいろ話をし、同じボクサー上がりということで、何とか予算の範囲で納まるよう面倒みてもらうことになった。元プロボクサーのテント屋さんも、リングの就職先が決まってとても喜んでいる様子だった。公式サイズよりやや小さめではあるが、30センチ高のキャンパスは"本物"の風格を漂わせている。おまけに、これまた失業中の使い古したサンドバッグをひとつプレゼントしてくれた。現在彼らは新しい職場で存分に働いてくれている・・・


新田ジム 最新情報

 7/10(木)にプロテストを受験した西 禄朋(23)と竹内俊介(22)が、揃って合格を果たした。これで石井フランシス(30)に続き、新田ジムに3人のプロボクサーが誕生したことになる。

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新田渉世(にった・しょうせい)
87年、横浜国大2年の時にプロデビュー。96年10月にOPBFバンタム級王座を獲得し、「国立大卒初の王者」としても話題となった。
34戦23勝(17KO)9敗2分

新田ボクシングジム   
神奈川県川崎市多摩区登戸2832 小田急線向ケ丘遊園駅徒歩5分
TEL 044-932-4639
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