キャッチ三浦の

アメリカン・シーン

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三浦  勝夫
(ワールド・ボクシング米国通信員)

息子達と


 PPV全盛とショータイムの衰退

 

 先週末、南カリフォルニアで発生した山火事は筆者が居住するサンディエゴ周辺でも火が広範囲を覆い、死者が出るなど多大な被害に見舞われた地域があった。日本でも大きく報道されたらしく、我々の安否を気づかってわざわざ電話をかけてくださった方々もいた。幸い、筆者と家族が住む周辺は3日ほど太陽が見えず、細かい灰が降った程度で、取り立てて危険に遭遇することはなかったのだが、この場を借りて無事を報告するとともに、皆様にお礼を申し上げたい。

 さて、火事が鎮火するとともに暦は11月に突入。早いもので今年も2ヵ月を切ることになった。アメリカでは以前から毎週土曜日にビッグファイト、タイトルマッチが集中する傾向にあるのだが、それにしても2ヵ月間のラインナップがすごい。11月1日のメイウェザー−ヌドゥ+マルケス兄−ゲイナーのダブルタイトルマッチを皮切りに、今週8日にはロイ・ジョーンズ−アントニオ・ターバー戦があり、その1週間後の15日にはマルコ・アントニオ・バレラ−マニー・パッキアオと続き、22日には初めてデラホーヤ・プロモーションがメジャータイトルを手がけるオスカル・ラリオス−ナパーポン・ギャティサックチョーチャイ、ハビエル・ハウレギ−リーバンダー・ジョンソンのダブルタイトル戦が待っている。同日、メキシコのティファナではフリオ・セサール・チャベスの“正式”引退ラス前ファイト、対ウィリー・ワイズ戦(チャベス・ジュニアとの共演)も予定される。唯一次週29日だけが、今のところ無風日で、やっと息がつけそうだ。

 しかし12月に入ると、6日にレノックス・ルイスとの一戦でアメリカでも名を売ったビタリ・クリチコがニューヨーク・デビュー。カーク・ジョンソンとグローブを交わす。同じ6日、プエルトリコでは次期王者候補ミゲール・コット戦にエリック・モレル、イバン・カルデロンの防衛戦が組まれ、同日メキシコシティではWBC世界L・フライ級王者ホルヘ“トラビエソ”アルセがノエル・ツニャカオを迎えて防衛戦に臨む。今やメキシコで超有名人になったアルセが登場することから、大きな話題を集めることは間違いない(理由は長くなるので別の機会に)。そして翌週13日、ドン・キングがブチ上げる巨大興行がアメリカ東部のメッカ、アトランティックシティで繰り広げられる。バーナード・ホプキンス−ウィリアム・ジョッピーのミドル級戦、ハシーム・ラクマン−ジョン・ルイスのヘビー級戦、リカルド・マヨルガ−コーリー・スピンクスのウェルター戦など合計8つのタイトル戦が一度に挙行されるというから驚きだ。もしこれらの試合が個々に開催されれば、もっとすごい過密スケジュールになっていたことだろう。

 こんな興行ラッシュを前にすると、いくら「ボクシング人気は低下している」と世間が噂しても、なかなか信じがたいというものだ。これだけ次から次へと著名ボクサーの試合が観戦できることは、ハッピーではないか。ボクシング記者冥利に尽きるというものだ。それぞれのカードをピックアップしてみると、ほとんどが大手ケーブルテレビのHBOか同局製作のペイ・パー・ビュー(PPV)によって放映されることに気づく。PPV放送で茶の間に流れる試合は全部がペイするとは言えず、赤字覚悟のカードも依然としてあるのだが、以前と比べてもPPV放映は勢いを取り戻し、ボクシング中継の主流へと復帰しつつあるようだ。ちなみに今列挙したカードでPPVで流れるものは、ジョーンズ−ターバー、ラリオス、ハウレギのダブル、プエルトリコの試合、そして8大タイトル戦の5試合である。

 HBOの繁栄の影で地位を低下させているのが、ライバル局ショータイムである。10月に行われたジェームズ・トニー−イバンダー・ホリフィールド戦+ホエル・カサマヨール−ディエゴ・コラレス戦などを手がけた同局だが、この2ヵ月間で放送されるのは、11月22日のホープ、ロッキー・フアレスとフランシスコ・ボハードが登場する試合のみという寂しさ。以前定期的に放映していた若手発掘シリーズ「ショーボックス」もいつの間にか打ち切りの?状態だ。

 経営悪化による予算削減がショータイムのボクシング放映に影響を及ぼしている。目玉選手、マイク・タイソンの去就が定まらないことも頭が痛いところだ。噂では同局はボクシングから身を引くことも検討中だとか。そんな中、ショータイムは来年2004年前半の放映スケジュールを発表している。1月3日にはアセリーノ・フレイタスがライト級転向を図り、WBO王者として長期政権を築くアーサー・グレゴリアンに挑む。そして2月7日放送分ではモスクワからコーシャ・ヅー−シャンバ・ミッチェル戦を録画で流したあと、ジェームズ・トニー対大型ヘビー級ジャミール・マクライン戦へとスイッチする予定。翌3月6日は初戦でストップが論議を呼んだカサマヨール−コラレスのリマッチがプランに上る。これで完全打ち切りとなる可能性もあるとのことだが、ライバル局に先立ってラインナップを発表するあたりは、まだ巻き返す余力あり?とも感じられる。それともボクシング放映はHBO1局に独占されてしまうのか。長年続いたテレビ戦争の結末が近づいて来ている。

 

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