アマ連に「ちびっ子ボクサー」を処分する権限はあるのか?
このところわがホームページの掲示板でも「アマチュア問題」が盛り上がっているようだ。判定疑惑は今に始まったことではないが、カシミジム(金沢市)で小学生からボクシングを始めた中岸風太君が、高校1年生の今年、インターハイの県大会で優勝したにもかかわらず、日連から登録を抹消され、全国大会出場の権利を奪われた件については、筆者の周りでも同情の声が多い。小・中学生時にプロの興行に出たことを責められての処分という。アマ登録以前の問題、しかもちびっこのアトラクションに出場したことがアマ規定違反だというのだが、もしこれが通るなら、他にも今のアマ選手でも引っかかるのがいるだろう。同様の例は過去にいくらでもあったにもかかわらず、なぜ今回だけ厳しく処分する必要があったのか。まさか「一罰百戒」のつもりではないだろう。
この問題は単にアマチュアのみならず、また一ジムだけの問題でもない。プロの協会加盟の約250のジムにとっても、人ごとではないはずだ。これについては本誌ワールド・ボクシングの次号で特集を組み、リポートしたいと思う。
中岸君がもしアマの選手登録を済ませた後も「プロの興業」に出たというなら、これは問題かもしれないが、そうではない。また、当然ながら「ファイト・マネー」ももらっていなかった。
百歩譲って、もしちびっこボクシングに出たことがアマ規定違反だとするなら、それはこの種アトラクションに出場させたプロモーターやジム関係者の「責任」であり、子供を責めてはならない。どこのジムでも、ちびっ子の練習生は珍しくないし、興行の合間に余興でチャンピオンの相手を務めたりすることは少なくない。この時点で、小・中学生の彼らが将来アマで試合に出るかどうかなど、決めていないのがほとんどだろうし、ましてや自分の行為がアマ規定に抵触し、アマ資格を失うほど重大なことをしているなどという自覚はあるはずがない。
それでもちびっこが「プロの興業」に余興で出ることも処分の対象となるのであれば、日連はその旨日本プロ
ボクシング協会を通じてでも、周知徹底させなくてはならないし、もしそういう努力を怠っていたとすれば、今回の件ても日連に責任がなかったといえるだろうか。
そもそもアマで選手登録する以前の小・中学生、いわゆる”ちびっこボクサー”の活動を咎めて「アマ規定違反」などというのは越権行為ではないのか。そんな資格が日連にあるのか、問いたいものである。子供の頃にプロのジムに通い、そこから成長してアマのチャンピオンになった選手は何人もいる。ちびっ子ボクサーはアマにとっても宝物として扱ってもいいではないか。「街の学校」ともいうべきプロのジムは、ボクシングの底辺拡大にも貢献しているはずだが、果たしてこの点に敬意を表するアマチュア関係者がどれだけいるだろうか。
最初にこの件をスクープしたのは、毎日新聞7月18日付の朝刊スポーツ欄だった。大阪本社の来住(きし)哲司記者が両者の言い分を聞いた上で、しっかりとした署名記事を書いている。ちなみに来住記者は元アマ選手で、アマチュアのシステムも熟知した上で、この記事を書いている。記事は「高1”失った夏”」と題し、中岸君が全国高校総体への出場権を得たにもかかわらず日連から出場を取り消されたとした上で、「厳格過ぎるとも思える規則運用に対し、選手の関係者は処分の撤回を求めている」と書いている。そうなのだ、後日共同通信が各紙に配信した記事では「中岸君が日連から出場を取り消された」という事実経過がメインだったため、後半部分が割愛されたところが多く、読者に誤解を招きやすいが、中岸君側は「処分の撤回を求め」ているのだ。これを落としては、この問題の本質に近づけない。
実は今回のこのコラムのテーマは、第2回目で書いた内容にも関連するが、アマ・プロ両者の間に横たわるあまりにも大きな溝をなんとかしろ−−と助言することだった。今のアマとプロの境界は、それこそ隣国の「三十八度線」以上に隔たりが大きい。日連のトップがプロを毛嫌いし「プロと付き合うな」と指導しているのは周知の事実だが、これこそが、今回の不可解な中岸君の処分の根底にあるように筆者には思われる。
スポーツ界はいまやアマ・プロ交流が進み、体協も英文表記中の「Amateur」の文字を外そうという動きが出ている時代である。またAIBA(国際アマチュア・ボクシング協会)もやはりアマの表記を外し、代わりに「オリンピック」の名を用いようとしている。そんな時代に、日本のアマチュア・ボクシングだけが頑なに時代に逆行して、プロを敵視しこのまま”鎖国状態”を続けて行っていいものか?
現状のままでは、いくら強化に金をかけても、日本が今後も国際大会で好成績を残すことなど、到底望めまい。何度でも書くが、アマ関係者には昨年のアジア大会の「屈辱」を忘れるなと言いたい。「金メダル5個取る」と大ボラ吹いておきながら、金どころか予選でただ1人として勝ち残れない体たらく。この惨敗に、体協から名指しで「問題外」と批判されたあの屈辱を、忘れてほしくはない。